薬品火災・油火災の特徴は、可燃性の液体そのものが燃えることです。燃えている液体が広がれば、一気に火災は大きくなり、逃げることもままなりません。また、薬品や油火災は大量の黒煙や有害ガスを発生する傾向があるため、素早く風上へ避難することが重要です。
薬品火災・油火災の代表例
身近な薬品火災・油火災5つを例示します。
- キッチンの油火災
- 灯油ストーブの火災
- ガソリンによる火災
- アルコールによる火災
- スプレー缶による火災
キッチンの油火災
フライパンの油にガスコンロの炎が引火する火災です。油が垂れてしまうだけでなく、加熱しすぎても発火します。IHコンロでも放置してしまうと発火します。
地震でフライパンがゆすられて、ゴトクの間に落ちて発火します。仏壇のお線香やろうそくも火事の火元として数多く報告されています。家が燃えてしまっては、避難しても帰る場所がありません。地震時はとにかくすぐに火を消してください。
油火災で絶対にしていけないのは「水をかけて消火しようとすること」です。加熱した油に常温の水道水をかけることで温度を下げられるように思いがちですが、水蒸気爆発したり、水と油が踊り狂ってあなたや家族を襲います。
キッチン用にスプレー缶サイズの消火器があります。ホームセンターでも買えるもので、3,000円程度で3年近く使用できます。ぜひ冬場の乾燥時期に、買っておいてください。
石油ストーブの火災
石油ストーブの火災で多いのは、洗濯物を真上に干して起こる火事、カーテンに引火して起こる火事です。
石油ストーブは部屋全体を温めてくれるので、洗濯物を真上に干す必要はありません。万一、洗濯物が落ちても石油ストーブに当たらない位置で干してください。
カーテンへの引火は、冷気が発生する窓のそばに石油ストーブを置きたくなるために毎年必ず発生する火事です。カーテンのそばには石油ストーブを置かないようにするか、カーテンをストーブと逆側の窓枠にまとめておきましょう。
ガソリンによる火災
ガソリンスタンドでの引火は、冬に発生することがあります。静電気が給油中のガソリンに引火して爆発するのです。
また、草刈り機などのガソリンエンジンに給油するときに引火する例もあるので、ガソリンの取り扱いには注意してください。
アルコールによる火災
アルコールに引火すると、簡単には消えません。たとえば、キャンプの火起こしに使うジェル状の着火剤を火のくすぶっている炭に垂らすことで、炎が手元まで登ってくると衣服にまで引火してしまうことがあります。
また、除光液などのシンナー類も乾ききる前に火のそばに指を持っていって引火することがあります。揮発性のものを扱う際には、十分注意して使用してください。
スプレー缶による火災
殺虫剤やヘアスプレーにライターの火を近づけると、火炎放射器のように炎を吹きます。スプレーの噴霧が弱いときは手元に炎が近づき、最悪の場合は缶が爆発します。
決して遊んだりせず、またキャンプで陽の当たるところに置いたり、光熱になる車内やテント内に放置しないようにしてください。
燃えている薬品や油に水をかけてはいけない
燃えている薬品や油を消化するために水をかけないでください。水分の多い食材を油で揚げると油が飛び散ることと同じ現象となり、かなり危険です。
まだ炎が小さいならば、なべぶたで炎を抑え込みましょう。コンロの火を消して、飛び散った油を拭いてから調理を再開してください。
炎が天井近くまで達したら一般人では消火できませんので、すぐに消防車を要請しましょう。もしも、油用消火スプレーがあるなら、すぐに使用してください。
毛布や濡れタオルを炎にかぶせて消化する方法もありますが、素材によってはより一層燃え広がる場合があります。確実でない消化方法は選択しないでください。
自宅の消火器は薬品火災に対応していますか
消化器のラベルに白・黄・青の丸いマークがあることを知っている人も多いと思います。これは、対応している火災の種類を表示しています。
- 白→一般火災(A火災)
- 黄→油火災(B火災)
- 青→電気火災(C火災)
油火災の場合は黄色のマークが表示されている消火器で消火可能です。消火器は粉末タイプが主流なので、噴霧したときに驚くほど白煙がでます。少しだけ離れて消化してください。
薬品や油の火災は空気を遮断しても燃え続ける
薬品や油は一般火災とは異なり、空気がなくなっても燃え続けることがあります。また、揮発性の液体が広がることで、炎も同じ速度で広がる危険な火災です。
足元に広がったサラダ油や灯油には一瞬で炎が付きますので、とにかく自分が炎に巻き込まれないように液体の外へ逃げてください。
濡れたタオルをかぶせてもタオルごと燃えてしまうので、消火器がない場合は手が打てません。ためらわず、すぐに消防車を呼んでください。
スプレー缶が危険な理由は爆発と可燃性
スプレー缶は、可燃性のガスを使って、中の薬液を霧状に噴射するものです。可燃性でないガスであっても、圧縮されて密閉されているため、そのままキャンプの焚き火などに転がってしまったりすれば爆発します。
可燃性ガスかどうか以前に、スプレー缶の中には圧縮された気体が密閉されていることを知っておいてください。高温となる真夏の車内、陽の当たるベランダ、直射日光が入る窓辺などにスプレー缶は絶対に放置しないでください。