消火器の正しい使い方は、風上に移動して炎の根本をねらって噴霧することです。
今回は、正しい初期消火の手順を基本編と応用編に分けてお話します。

消火器の構造をおさらい
消火器はヘアスプレーと同じく、中に消火剤が入っており、封入されたガスなどで押し出されます。
火事の現場へ運ぶときは、下図の「レバー」のうち下側を持ちます。上のレバーは、噴射するときに使うものなので、運ぶときに持つと動いてしまう可能性があります。

消火器の使い方
消火器の使い方はシンプルです。
- ピンを抜く
- ノズルを火へ向ける
- レバーを握る

レバーは、自転車のブレーキのようになっていて、下側が固定、上側が動く構造になっています。噴霧するときはギュッと握るだけです。
消火器だけでは、自分の身長を超えるような大きな火事を消すことはできません。初期消火として、消防車が来るまでの時間稼ぎと割り切って使います。
消火器を使う手順とその理由
消火器を使う手順をもう少し細かく説明しますと、次の通りです。
- 火元から3m程度近くまで消火器を持ってくる
- 必ず風上に立つ
- ピンを抜く
- ノズル(ホース)を火に向ける
- 火の根本に噴射する
火元から3m程度近くまで消火器を持ってくる
炎の大きさによりますが、あまりに遠いと威力が半減します。一方、近すぎると火の粉を浴びる可能性がありますので、3メートル程度が目安だと思ってください。
特に、油火災の場合は消火器の噴霧・放出の圧力で、燃えている油を撒き散らしてしまう危険性があります。近づきすぎず、遠すぎずが原則です。
必ず風上に立つ
風下に立つと、次のようなリスクがあります。
- 煙が目に入って見えなくなる
- 火の粉が降り掛かる
- 噴射液をかぶってしまう
風上にさえ立てば、上記のリスクをほぼ回避できます。

ピンを抜く
消火器を火元に運んだら床に置き、レバーの黄色いピンを真上に引き抜きます。ピンを抜くと、上レバーが動くようになります。
運ぶ前に抜いてしまうと、レバーを握ってしまう可能性があるため、ピンを抜くのは直前までガマンです。
ノズル(ホース)を火に向ける
ノズルを火へ向けます。持つのはゴムホース部分ではなく、先端のプラスティックなどの部分です。
火の根本に噴射する《注意》
炎を消すためには、火の根本をねらって噴射します。
ついつい火の上を消そうとする人がいますが、全く意味がありません。根本の燃えているものに消火剤がかかることで、温度を下げ、空気を遮断することで火を消します。
【応用編】初期消火の手順
火災時の避難方法でもお話したとおり、火を消す前にすることがあります。現実的な初期消火の手順を説明します。
- 「火事だ!」と叫ぶ
- 誰か一人の目を見て「119番してください!」という
- 消火器を火元へ持ってくる
- 炎の向こう側に人がいないか確認する
- 消火を始める
- カラになった消火器を火元から遠くへ運ぶ
- 建物内に人がいないか確認する
まず、火事であることを周りに知らせます。消火しながらでは消防車を呼べない、救助すべき人の捜索ができない、風下にいる人の避難が遅れるといったデメリットを解消しなければなりません。
必ず周囲に「火事だ!」と叫び、協力者を作ります。
次に、「そこのお姉さん、119番通報してください」と、確実に相手が自分が言われたと認識できる方法で、消防車の要請をお願いします。
初期消火を始めます。このとき、炎の向こう側に人がいると、消火剤や火の粉を振りまいてしまいます。消火器で噴射する前に、必ず炎の向こう側に人がいないか確認しましょう。
消火器が空っぽになったら、その場に放置せず火元から遠くまで運んでおきます。消火器は密閉された金属製の缶ですから、炎に入ってしまうと爆発してしまいます。
【応用編】消火器の複数使用
マンションやオフィスビルの場合、消火器が複数ある場合があります。
火元の周辺が狭い場合や、一方に避難経路がないときに限り、向い合せで消火することがあります。向かい合わせにならざるをえないときでも、お互いに真正面にならないように立ち位置をズラして噴射してください。
消火器はホームセンターやネットショッピングでも手に入る
消火器はホームセンターやネットショッピングで買うことができます。本格的な消火器はやや維持管理にお金がかかります。また、廃棄処分には自治体のルールに従った方法にしないといけません。

小型の消化器でも数万円以上するうえに、内容物の入れ替えには専門業者に依頼して8,000円程度のお金がかかります。
わたしがおすすめしたいのは、小型の消化スプレーです。

一般的な殺虫剤と同じサイズ(ほんの少しだけ大きめのものもあります)で、使い方も殺虫スプレーと同じ。噴霧時間も本格的な消化器と大きく変わりません。
値段も安く、消費期限をすぎれば買い替えるだけで済みます。捨てるときは、防災訓練のつもりで、内容物を出し切って、自治体指定の廃棄方法で捨てて下さい。
保管場所は、直射日光が当たらず、火の元から少し離れた場所がベストです。ちなみにわたしは冷蔵庫の上に設置することにしています。
\ ネットでも買えます /
消化スプレーはキッチン用として販売されているので、基本的にはB火災(油火災)専用です。
【まとめ】消火器は万能ではない
標準的な消火器の連続噴射時間はたったの15秒。つまり、消火器だけで火は消せないと思ってください。
まずは、通報。そのあと、消火器の出番です。
さきに通報してから初期消火することが、被害を最小限にできるのです。
