火事の避難方法

火事の避難方法

火事を発見したときに最初にすべき行動は周囲に知らせることです。火事は自分ひとりでは対応できないだけでなく、周りの人にも避難を呼びかけることが重要です。伝えることで家族や近隣住民や会社の同僚の命を守ることに繋がります。

火事の初動は周囲へ知らせること

火事の初期対応は次の3点です。

  1. 火事だ!」と叫ぶ
  2. 119番電話する
  3. 避難経路確保する

ここまで完了してから、可能であれば消火器で初期消火を始めます。

ほとんどの人が「火を消す」ことを先に考えてしてしまいがちですが、「周囲に知らせることが最優先」であることをぜひ覚えておいてください。

火事の初動は周囲に知らせること

以下、消防分団活動経験と防火管理者として具体的な火事の避難知識をお話しします。

目次

火事発生、消せそうにないときの避難方法

火事が消せそうかどうかを判断するポイントは次の3点です。

  1. 炎が天井に届いているか
  2. 燃える原因がなくなるか
  3. 消火できるものがあるか

炎が天井に届いているか

炎が天井に届いてしまったら、素人が消火することは不可能だと思ってください。炎が天井を這(は)うように広がるのは時間の問題、天井の炎を消すのは至難の業です。

炎が天井に届いているか

ためらうことなく、すぐに119番して消防車を要請します。

119番

119番通報すると次のようなやり取りになりますので、知っておいてください。

119番「はい。、こちら◯◯です。火事ですか、救急ですか?」
あなた「火事です」
119番「けが人はいますか?」
あなた「いません」
<中略>
119番「火災現場の住所と、あなたのお名前、電話番号を教えて下さい」
あなた「わたしの自宅で、〇〇市△△町□□番地、✕✕といいます。電話は…」

このように、はじめに「火事か救急か」を聞かれるので「火事です」と言いましょう。通報が終わったら、すぐに屋外へ避難します。

燃える原因物がなくなるか

燃える原因はいくつかの種類があります。燃える原因が燃えて無くなる場合は消火が可能な場合があります。

火災は3種類に大別される

一般火災なら、紙などの燃えるものに限りがあるので、消火可能な場合があります。ただし、木造家屋の中で燃えている場合は延焼するので、消せないと判断したら消防車をすぐに呼びましょう。

一方、薬品や油火災の場合は一瞬で周囲に燃え広がるため素人が消火するのは困難です。1秒でも早く消防車を要請しましょう。また、間違った消化方法で2次災害を発生させてしまう可能性があるのも油火災の特徴です。

電気火災の場合は、まずブレーカーのスイッチを切ることで燃え続ける原因を解消できます。しかし、いったん炎が出た場所は目に見えなくとも内部で燃えている可能性があります。

表面は黒くなっていても、バーベキューの炭のようなもので、水をかけると火の粉が舞い上がりますよね。壁の中の柱が内部燃焼を起こし、数十分経ってから発火する場合があるのです。

自分自身で消火できる火事はほんの少し。炎が大きくなるにつれ焦りが増して、冷静な判断や行動ができなくなってしまうのが普通です。消火のプロを要請するのは無料です、すぐに通報してください。

消火できるものがあるか

手元に消火器があるかが重要です。一般火災は水で消火できますが、油火災と電気火災は水では消火が困難です。

キッチン用消化器
キッチン用の消火スプレーは油火災専用

消火器も一般火災、油火災、電気火災の3種ともに対応しているものかどうかが重要です。

キッチン用の消火スプレーは油火災専用です。一般火災に使うと、炎を大きくしてしまうこともありますので、用途を間違えないようにしましょう。

最大の危険は「煙を吸い込む」こと

火災で一番注意すべきものはです。煙は高温、有毒、視界不良と危険が重なり合っているだけでなく、一酸化炭素も運んできます。一酸化炭素は無味無臭、吸い込むことで呼吸をしても酸素が取り込めなくなるため意識を失います。

火事の避難は「煙を吸わない」
ハンカチや服のそでなどで口と鼻を覆う

火災現場では、絶対に煙を吸わないようにします。

  • 口にハンカチなどの布を当てておく
  • 煙は上に行くので姿勢を低くする
  • 呼吸を少なくするために口を閉じる
  • 子供は低めに抱っこする
  • とにかく下へ向かって降りる

また、自分の髪が焼けるにおいや、ナイロン素材の衣服が溶けるにおいがします。あわててしまわないよう冷静になって、確実に屋外へ逃げましょう。

煙は視界も奪います。さらに高温で、火の粉が混ざっているため、目が焼けてしまいます。ソフトコンタクトをしている場合は目の前が見づらくなることもあります。できれば目を細めて避難してください。

たき火
たき火の後始末にも注意

焚き火をしたことがありますか?炎のそばで大きく息を吸うと、煙でなくとも熱気でのどが焼けることがあります。喉が焼けると呼吸できなくなります。煙も同様、熱い気体なので、吸い込まないようにしてください。

逃げるときは火元の窓やドアを締める

火事になって119番通報したら屋外へ避難しましょう。このとき、余裕があるなら消火活動がスムーズになるように次のようにしておいてください。

  • 窓やドアを閉じて他の部屋への延焼を防ぐ
  • 玄関の扉は開けておく
  • 車や自転車を少し離れた場所に移動させる

消防士は重装備で放水ホースを抱えたまま自宅へ入ります。火元の部屋以外のドアは開けておいてください。

また、自宅に車や自転車があると消防車が駐車しづらくなります。消防車やはしご車が到着するまでに、少し離れた空き地などに移動させておいてください。

消火活動

窓やドアを閉じるのは、煙を閉じ込めて建物中に充満しないようにするためで、消防士が中の様子を見られるようにするためです。

逆に、2階にいるときに1階から火災が起こったときは、2階中のすべての窓を開けて、消防士が入りやすいようにしておいてください。

判断に迷ったときは、何もせず逃げる方法だけを考えてください。

ビル火災なら排煙窓を開ける

職場やホテルなどのビル内では、煙が充満しやすい場合があります。余裕があれば、煙を屋外に出す排煙窓を開けてから避難してください。排煙窓は、階段やホールなどの天井付近にある、火災時のための窓です。

排煙窓の開け方
排煙窓を開けることで、煙で視界が遮られなくなる

排煙窓の開け方は次のどれかが一般的です。

排煙窓の開け方
  1. ハンドル手回しタイプ
  2. ボタンプッシュタイプ
  3. 自動感知タイプ
排煙窓を開ける方法
排煙窓を開けるのはボタンを強く押し込むだけ

手回しタイプの排煙窓オープナー

昭和時代のビルで見られる古いタイプのものです。開ける、閉めるのどちらもハンドルをぐるぐる回す必要があります。ハンドルは、壁に埋め込まれた鉄板の中に隠されていることもあります。取り出して穴に差し込んで使います。

ボタンプッシュタイプの排煙窓オープナー

ボタンプッシュタイプの排煙窓は、手動・電動問わず、現在の一般的なタイプです。非常ベルのように簡単に押して外せるプラスティックの中にボタンがあるものや、常にむき出しになっているゴム製のボタンなどがあります。

いずれも、強く押し込むことで排煙窓のロックが外れるようになっています。押してしまえば、自動的に排煙窓が開きます。

ボタンプッシュタイプのものでも、ハンドルがついています。ハンドルは、排煙窓を閉じるとき専用なので気にしないでください。ボタンさえ押してしまえばOKです。

自動感知式の排煙窓

スプリンクラーなどの火災検知器と連動して、システムが自動で排煙窓を開けるものです。避難者は何もする必要がありません、そのまま避難してください。

排煙窓を開けるのは、火元責任者や避難の際に余裕があればすることです。逃げ遅れている人がいたりけが人がいれば、避難の援助を最優先してください。

建物の奥に向かわない

マンションやホテル、オフィスビルの火災では、建物の奥に向かわないことが重要です。

原則としてビルなどの大型建築物には2経路以上の避難通路があります。1つは通常の階段。もう1つは非常階段です。

しかし、狭く古い雑居ビルなどでは、非常階段に荷物をおいていることが多く、逃げられない可能性があります。

火災で非常階段で逃げるのは最終手段
非常階段は荷物置きになっている場合があり
安全とは限らない
非常階段が使えない事例
  • カギが掛かっている
  • サビで開かない
  • 外の荷物が当たって開かない

火災時に建物の奥にある非常階段を目指すと、逃げられない可能性が高いと言わざるを得ません。できるだけ、正面から逃げられないか、大きな窓から外へ出られないかを考えてください。

単純に「非常階段に向かえばいい」という考えは危険です。火の手が小さいなら、少々のやけどをしてでも正面から逃げたほうが確実です。建物の奥に進むのは最終手段と考えてください。

消防検査のときだけ非常階段がきれいになるようなビルには入らないようにしましょう。とりあえず整理した荷物は、かならず非常階段に戻されてしまいます。

火事の避難方法は家族にも伝える

火事に合うとき、家族といることが多いと思います。火事は夜に発生することが多く、自宅や旅行先のホテルで家族と寝ているときに火災に巻き込まれる確率が高いといえます。

マンションやホテルのベランダには
下階への避難はしごがある
マンションやホテルのベランダには
下階への避難はしごがある

ニュースでも火事で被害者が少ないのは夜中の工場火災くらいで、ほとんどが民家での火事です。夜中に自宅で火事が発生した場合、あなたが家族を救う方法はほぼありません。

プロの消防士でさえ、命がけでも救助できないことがあります。一般人が火災に勝つ方法は、今すぐ家族に避難ノウハウと自宅での避難経路を伝えることです。

火災だけでなく、地震も同様、とにかく何も持たずにひとりひとりが屋外に出ることを伝えておいてください。

《参考》地震発生時の避難方法

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