災害時は可能な限り救える人を救うべきです。
しかし、あなたに万一のことがあれば家族を守る人はいません。逆に、自宅にいる家族を救ってくれるのは近所の知人です。人間関係を構築・整理しておきましょう。
災害時に頼れるご近所をつくっておく
地震が起こったとき、家族全員が自宅にいるとは限りません。
その場にいないとき、家族を守れるのはご近所や親戚です。「助けてあげなきゃ!」と思ってもらえるような人間関係をつくっておくことが重要です。
私の経験談です。平日の昼過ぎに震度4クラスの地震があり、私と妻は仕事中、子供は自宅にいました。私は防災担当者なのでその場を離れられません。妻は急いで帰っても30分はかかります。
しかし、結果的には心配不要でした。お向かいのご家族がうちの子供も連れて屋外避難してくれていたのです。
同じ年頃の子供を育てていることから仲良くなり、お願いすることもなくすぐに迎えに来ていただけたそうです。こんなにありがたいことはありません。
人間関係の構築というと、面倒なイメージが先行します。しかし、それなりのお付き合いがなければ、他人の家族まで助けようとは思えないものです。
難しく考えることはありません、できる範囲で、できることをするだけで十分です。
- 自治会の清掃活動に参加する
- 顔を合わせたらあいさつする
- おすそ分けを配る
自治会があるなら、清掃活動などに参加しましょう。自然と会話できますし、家族構成もわかります。
自治会がない場合は、顔を見たら会釈(えしゃく:軽く頭を下げるあいさつ)するだけするだけでも構いません。まったくあいさつがないような人はお付き合いしないほうが懸命かもしれません。
近所のご挨拶が活発な町は犯罪の発生が少ないことが古くから防犯研究上でわかっています。
知り合いしかいない町に、知らない人が紛れ込むのは難しいからです。犯罪者の心理的にも、人間関係の薄い町に行ったほうが安全に泥棒できると考えるのだそうです。あいさつは防犯のためにもおすすめです。
おすそ分けをするのも喜ばれます。実家や友人などから野菜や果物を大量にもらったら、近所に配りましょう。全部自宅で消費できるように工夫する前に、必要以上のものは配ってしまいます。
釣りが趣味の場合や、タケノコ掘り、家庭菜園などで、思いのほか大量に手に入ることがあります。こんなときこそご近所に「多すぎて食べきれないので少しですけど食べてもらえませんか?」といいながら配ります。
旅行のお土産はお金がかかっているのでおすすめしません。相手も買ってこないといけないのではと余計な負担をかけてしまします。原則、無料で手に入って、余ったものを配りましょう。
無料で手に入ったものなら、相手も自分も負担はありません。
渡すときのコツは「処理できなくて困っているので協力してほしい」という思いを伝えることです。
決して「あげる」という雰囲気を出さないようにしましょう。こうすることで、自然と協力関係ができあがっていきます。ただし、おすそ分けは半年に1回程度で十分です。
毎月のようにおすそ分けする人がいますが、かえって迷惑になりかねません。過度なおすそ分けはNGです。
許容範囲を超える救助活動をしない
元自衛官、元アメフト部主将、元看護師…世の中には体力的・技術的にハイレベルな人材がいます。たまたま近所の人がそんなことがあります。かといって、災害現場で何もかもを背負うことはできません。
大災害が発生したときは、まず自分の身を守ってください。今すぐ救助活動に加わるのは早すぎます。自分が避難所へ向かうとき、家族と近所の人を誘導すること。ここまでを確実に完遂しましょう。
あなたの健康が家族を守る
大災害の発生時、最優先するのは自身を守ることです。理由が3つあります。
- 自分が被災者として救助を求めないことで他の誰かが助かる可能性が高まる
- 自分が無事でいることで、家族の救助が可能になる
- 自分と家族が無事であることで救助活動に参加できる
自分が被災者にならないことで誰かが助かる可能性が高まる
大災害の発生時、助けられる側か、助ける側かは大きな差になります。
あなたが自分の身を守り、他の救助者の手伝いをすることができれば、救助者はあなたの代わりに別の人の救助が可能になるばかりか、あなたがもう一人別の人を助けてくれるので、負担が半減します。
自分が無事でいることで、家族の救助が可能になる
救援活動者は、限られた人数しか救うことができません。
では、家族を救助できるのは誰か。あなたしかいません。もしもあなたが負傷していたなら、家族を救うことはできません。家族を救うために、あなた自身が無傷であり、体力を温存しなければなりません。
自分と家族が無事であることで救助活動に参加できる
大災害発生時、国のシュミレーションでは「発災3日以内に救援物資の第1段を届ける」という緊急時業務継続計画(BCPと呼ばれます)を策定しています。
つまり、大災害の発生時は、3日間は被災者同士で支え合うことが大前提となっています。
避難所に家族とともにたどり着けたなら、健康状態をたもったまま、救助活動や避難所運営に協力してください。
つまり、あなたが無事でいると、多くの人が救われる
あなたが、あなた自身を大切にすることで、家族を救うことができます。
3日後に救援物資が届く補償はありません。
できるだけ健康状態を保ったまま、救助・救援活動に参画してください。
災害時に住ませてくれる親戚の確認
長期避難が必要な大災害にあったときは、仮設住宅での生活を検討することになります。
こうなると、地域に残ったわずかなアパートやマンションを奪い合う形となり、賃貸住宅もすぐになくなります。
結果、親戚の家に仮住まいをお願いすることとなるのが一般的ですが、どうしてもトラブルが発生しがちです。
- 被災者側が費用負担をしない
- 受け入れ側が高圧的になる
- 生活リズムが異なる
- 紛失物によるトラブル
- 家族間の意見相違
少なくとも、被災者側は収入の現状を伝えて、一般的なアパートの相場程度の家賃と、水道光熱費、食費を丁寧に説明して支払う約束を始めにしておきましょう。
その他、思いも寄らないトラブルが発生します。
なにもかも受け入れてくれるほどの日頃のつながりを持っておきましょう。
余裕が出たら可能な限り避難所運営を
繰り返しになりますが、大災害の発生時は3日は救援物資の到達は見込めません。
心身ともに、できるだけ細く、長く体調を安定させることが重要です。
もしもあなたと家族が無事に避難できているならば、物資到着までの数日は率先して避難所運営への協力をお願いします。
救援活動(公助)が行き届くまでは、避難者どうしの助け合い(共助)が上手くいくかどうかが分岐点です。そして、無理をしすぎて倒れたりしないように。自分の健康状態の管理(自助)も並行してください。