内水氾濫は、主に下水道管や用水路から水があふれることで発生します。下水管は汚水管(おすいかん)と雨水管(うすいかん)があります。あふれ出すことで道路冠水、床下浸水、床上浸水と徐々に避難困難になるため、いかに早く避難を決断できるか、安全な避難経路を把握しているかがポイントになります。
台風などの豪雨によってあふれるのは雨水管からですが、汚水管にも雨水が入り込むため、結果的に汚水管もあふれます。汚水管があふれだすと、家庭のトイレや排水口から汚水があふれて、実質的に水道は使えなくなります。
昭和初期に下水道を整備した都市では、汚水管と雨水管を1つの下水管で共用する合流式になっている場合があります。合流式の場合は、大量の雨水に汚水が混ざって、河川に放流されることが多いので、河川氾濫時は洪水被害のあったエリアは全面的に消毒作業が必須となります。
床下浸水が始まったら
道路冠水が進むと床下浸水が始まります。できるだけ早く玄関ドアの内側に土のうを積み上げましょう。
土のうは土がないと作れないため、土のう袋に強めのビニール袋をいれて、水道水を入れる方法がおすすめです。
台風が過ぎたあとには、断水が続いたときでも土のう袋に使った水を活用することができます。また、土とは違って水を吸い込まないので片付けるのも簡単です。土のう袋はホームセンターなどで10枚300円程度で売っています。
床上浸水が始まったら
床上浸水が始まったら、1階で生活している乳幼児や高齢者を2階へ避難させましょう。ペットがいる場合は避難も考慮して携行ゲージも用意しておきます。
また、1階が完全に浸水した場合は2階の窓から避難する必要があります。ライフジャケット、浮き輪などがあればすぐに準備しましょう。浮力のあるものがないときは、ペットボトルやアウトドア用のウォーターポットや灯油のポリタンクなどを空にして、ベルトなどでお腹側に固定しておきましょう。
床上浸水のときに2階へ持って上がるべきもの
床上浸水時、家財はできるだけ2階へ移動させておきます。優先順位は次の通り。
- 食料品・飲料水
- 衣料品・寝具
- 電気ポットや最低限の食器
- 写真・アルバム類
- パソコンやルーター
その他、家電製品全般が候補となります。完全に浸水した場合は買い替えが必要となるため、生活再建に相当な出費がかさむからです。重くて持ち運べない大型テレビ、冷蔵庫、洗濯機、電子レンジなどはあきらめ、炊飯器や掃除機といった持ち運べるものだけでも2階へ移動させておきましょう。
床上浸水のときコンセントはどうすればいいか
床上浸水になりそうだと判断したときは、1階のコンセントは可能な限り抜きます。漏電による停電や火災、感電を避けるためです。また、ブレーカーの操作がわかるなら、1階部分の電源は落としておきましょう。
ブレーカーは、電気の流れを止めてくれるスイッチです。大量の電気を同時に付けると自動でスイッチが作動し、ONでもOFFでもない中間位置になります。浸水が解消したあとにブレーカーが作動して中間位置になっているときは、まずOFFにしてからONにすると電気が使えるようになります。
もし、床上浸水で漏電している場合などはスイッチをONにしようとしてもすぐに中間位置まで戻ります。OFFにしてできるだけ早く電気工事業者へ連絡しましょう。
台風時にトイレがあふれだした
汚水管が雨水の混入でいっぱいになると、地上にあふれ出してきます。すでにトイレ下の排水管は満水なので、トイレを流すとすべてあふれかえってしまいます。
もうすぐ溢れそう!というときは、使用しないことはもちろん、大きなゴミ袋2枚を重ねて水を入れた「水のう」を作って、便座(座るところ)に置いて下水が逆流してこないようにします。つまり、水のうでフタをしてしまします。
トイレがあふれそうになったときにしてはいけないこと
トイレがあふれそうになったら、絶対にトイレを使用してはいけません。豪雨による溢水(いっすい)は、あなたが流した排水だけでなく、さまざまな汚水が混ざったものです。あふれてしまうと、トイレの消毒清掃が必要となります。
トイレがあふれたときの清掃方法
トイレのあふれ水は、大腸菌などの有害な菌や物質が混ざっています。豪雨が過ぎ、トイレが流れるようになったら、あふれかえった(汚染された)部分に次亜塩素酸系の消毒液を使って拭き掃除しましょう。
汚染された部分を丁寧に殺菌・消毒しなければ、ヘドロの乾燥後に舞い上がる粉塵で喉や鼻に炎症をおこすなどの健康被害が発生する場合があります。下水の清掃は掃除機などではなく、必ず次亜塩素酸による拭き掃除が必要です。
なお、新型コロナウィルスの除菌に効果的なアルコール消毒もある程度は有効ですが、汚水による汚染には次亜塩素酸が最適な殺菌方法とされています。