浸水時の避難は、道路冠水前が原則です。避難所までの道が道路冠水すると、歩道や道路だけでなく、用水路との境目やフタがずれてしまったマンホールなどがすべて見えなくなってしまうため、危険です。
道路冠水が始まっているかどうかは、窓の外を見るしか方法がありません。テレビやスマホの台風情報を見ているだけではわかりません。少なくとも1時間に1度は窓から道路の様子を見ましょう。
浸水時の避難はどうすればいい
浸水時の避難方法は2つあります。
- 浸水エリアから離れる「水平避難」
- 浸水深さより高く移動する「垂直避難」
水平避難
水平避難の代表例としては、浸水エリアより外にある避難所への避難です。浸水ハザードマップを見れば、浸水しないエリアがあることに気づけます。
車があるなら道路冠水が進行する前に、避難グッズを積み込んで早急に浸水エリアの外まで出てしまいましょう。可能であれば、浸水エリア外の避難所か、大型ショッピングモールや大型スーパーなどを目指します。
ショッピングモールやスーパーでは、2階以上の立体駐車場に止め、店舗内に避難しておきます。最悪の場合、食品を手に入れることも可能で、車も浸水の心配がありません。逆に地下駐車場はタブーです。
垂直避難
垂直避難の代表例としては、2階以上の部屋での自宅避難、マンションなら上層階への避難です。
マンションの場合は、避難グッズを持って3階以上の知り合いの部屋に入れてもらいましょう。知り合いがいない場合は、エレベーターホールなどの雨風がしのげる場所に避難しましょう。
なお、平屋住まいの方は無条件に避難所へ避難する必要があるので「もう少し雨が降ったら」などの自己判断をせず、避難所開設の連絡が入ったらすぐに避難してください。
自宅避難の注意点は?
自宅避難とは、浸水が起こっても2階以上の階で生活できるようにする避難方法です。
自宅避難は、避難所まで移動できないときに有効な避難方法ですが、家が押し流されるほどの洪水には対応できません。
浸水ハザードマップの使い方
浸水(洪水)ハザードマップには、2種類のハザードマップが書かれています。
一般的に都市型浸水のほうが水深が浅いので、自宅避難(垂直避難)が選択できます。
河川氾濫は水深が深いため、自宅避難ではなく浸水エリア外へ避難(水平避難)する必要があります。河川氾濫水位情報に注意し、早めに浸水エリアから脱出します。
車避難の注意点は?
車の避難には大きなメリットがある反面、大きなリスクもあります。新型コロナの影響で、避難所でも車中泊ができるようになってきていますが、十分に検討した上で車で避難するかどうかを決めましょう。
車中泊避難のメリット
車で避難するメリットは数多くあります。
- 家族で一度に避難できる
- ペットと避難しやすい
- 避難所のストレスを緩和できる
- 防災グッズを多めに運べる
- 冷暖房が使用できる
- 電源が使える
- テレビやラジオが使える
- 施錠ができる
特に、プライベート空間が少ない避難所生活に比べて、個室として使用できるメリットは大きく、近年注目されている理由の一つです。特に女性連れの避難や乳児のいる家庭、ペットがいる場合に有効です。
車避難のデメリット
一方で車避難のデメリットも少なくありません。
- 狭い空間で寝ることによるエコノミークラス症候群の誘発
- ガソリンが無くなることでかえって困る
- アイドリング音が騒音となる
- 車内灯などが他の避難者の迷惑になる
- 車中泊避難を受け入れてくれる避難所が少ない
- 避難所内にいないため連絡事項が伝わらない
- 浸水が進むと車外に出られなくなる
- 避難中に道路冠水で立ち往生してしまう
エコノミークラス症候群とは、狭い空間で長時間同じ姿勢を保つことで血流が悪くなり、血栓などができて足のふくらはぎや太ももなどに激しい痛みを発症するものです。血栓が肺に至ることで重症となることもあり、車中泊避難者によく見られることで知られています。
《参考》怖い!エコノミークラス症候群 厚生労働省HP
車中泊避難は、スピードを要する河川氾濫、津波、噴火時の避難方法として有効です。ただし、河川氾濫に限っては道路冠水によるリスクを把握した上で、決定しましょう。
道路冠水時に避難所へ向かう道の危険性
道路冠水時は、道路の状況が濁った一面の水面に隠れています。夜の道路冠水はより一層危険で、避難所に向かうのは避けるべきです。水面の下には次のようなリスクがあります。
上の写真のように、道路や線路の下をくぐる立体交差をアンダーパスといいます。水害でまずはじめに冠水する可能性が高いので、避難経路にアンダーパスがないか確認しましょう。
自治体もアンダーパスは重点的に浸水対策をしていますが、想定外のゲリラ豪雨や線状降水帯には対応できません。車で冠水道路に入れば、車を失うだけではなく場合によっては命も落としかねません。ハザードマップは要確認です。
- 道路と用水路、歩道の区別がつかない
- 外れてしまったマンホールの穴が見えない
- 倒木が見えない
- 崩れた石垣の石が見えない
- 倒れた自転車が見えない
上記のような障害物や穴などを知らないまま長靴で歩いたり、車で移動することは非常に危険です。道路冠水時に避難する場合は、十分に路面が見える程度の水深時にします。
また、立体交差している道路の冠水はかなり深い場合があるため、避難所までの経路候補から外しておきます。場合によっては通行止めとなっていることもあります。
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避難指示で避難するかしないか
行政からの避難情報は、令和3年に改定されました。従来の避難勧告が廃止され、緊急安全確保から、避難指示、高齢者等避難、大雨・洪水・高潮注意報、早期注意情報までの5段階となりました。
避難指示は4段階目の危険度となっており、避難所へ向かうなら避難指示の発令時が適切です。しかし、未経験の避難所へ向かう人はごく少数で、通常は一人暮らしの高齢者がほとんどです。
地震や津波などすぐに体感できる災害時には、年齢や家族構成の差がなく避難所に多くの人が避難されます。いつかは避難する日が来ると考えて、一度は避難所へ向かっておきましょう。
避難所生活については、避難所生活ノウハウのページを参照ください。