火事の避難方法|絶対に忘れてはいけない避難手順

火事の避難方法

火事を発見したときに最初にすべき行動は周囲に知らせることです。

火事は自分ひとりで対応できません、周りの人にも避難を呼びかけることで被害を最小限にすることも可能です。

また、伝えることで家族、ご近所さんや会社の同僚の命を守ることにも繋がります。

火事の初動は周囲へ知らせること

今回は、知っているようで知らない火事の避難方法とその理由についてお話します。

目次

火事避難の初期対応の3ステップ

火事の初期対応は次の3点です。

  1. 火事だ!」と叫ぶ
  2. 119番電話する
  3. 避難経路確保する

火事だと叫ぶことが最優先

火事は自分ひとりが逃げれば済むような災害ではありません。

アメリカのロサンゼルスをはじめ、近年は山火事のように大きな災害に発展することも少なくありません。

周囲の人に知らせることで、さらにその人達が誰かに伝えるという良い連鎖反応が期待できます。

まずは「火事だ!」と叫ぶことができるようにしてください。

119番に消防車を要請する

消防車の到着にはどうしても時間がかかります。到着までは、火事はどんどん進行します。

少しでも早く119番通報をしてください。

ただ、自分が電話する必要はありません、「だれか消防車を呼んでください!」と叫ぶだけでも構いません。

火災現場

避難経路を確保する

火事で恐ろしいのは、逃げ道がない場合です。

逃げようとする先が火元だった場合は、別の避難経路を考えます。
決して「消火をしてみてから逃げよう」と考えないでください。
まずは確実に外へ出られる事を確認、消火は後回しです。

火事の避難方法

火事避難の初期対応3つができたら初期消火をしてみる

ここまで完了してから、可能であれば消火器で初期消火を始めます。

消火できたら幸運ぐらいの心構えで初期消火をしてみます。

まわりに迷惑をかけたくない思いで消火したい気持ちになりますが、無理に消そうとするとかえって手遅れになる可能性があります。

繰り返しますが、初期消火よりも家族の避難誘導や、周囲へ知らせることが最優先です。

「火を消す」ことを先に考えてしてしまいがちですが、「周囲に知らせることが最優先」であることを絶対に忘れないでください。

火事の初動は周囲に知らせること

以下、わたし自身の消防分団活動経験と防火管理者としての立場から、具体的な火事の避難知識をお話しします。

火事発生、消せそうにないときの避難方法

火事が消せそうかどうかを判断するポイントは次の3点です。

  1. 炎が天井に届いているか
  2. 燃える原因がなくなるか
  3. 消火できるものがあるか

炎が天井に届いているか

炎が天井に届いてしまったら、素人が消火することは不可能だと思ってください。

炎が天井を這(は)うように広がるのは時間の問題、天井の炎を消すのは至難の業です。

炎が天井に届いているか

ためらうことなく、すぐに119番通報して消防車を要請します。

119番通報をためらう人がいますが、こんなときのために消防士は徹夜で待機しています。

消防車を呼ぶときの実際のやり取りを知っておこう!|避難時にあわてないために

119番

119番通報すると次のようなやり取りになります。

119番「はい。、こちら◯◯です。火事ですか、救急ですか?」
あなた「火事です」
119番「けが人はいますか?」
あなた「いません」
<中略>
119番「火災現場の住所と、あなたのお名前、電話番号を教えて下さい」
あなた「わたしの自宅で、〇〇市△△町□□番地、✕✕といいます。電話は…」

このように、はじめに「火事か救急か」を聞かれるので「火事です」と言いましょう。

通報が終わったら、すぐに屋外へ避難します。

燃える原因物がなくなるか

燃える原因はいくつかの種類があります。燃える原因が燃えて無くなる場合は消火が可能な場合があります。

ゴミからの火災
ゴミ出しの前日に出されたゴミは放火魔のターゲットになる
火災は3種類に大別される

一般火災なら、紙などの燃えるものに限りがあるので、消火可能な場合があります。ただし、木造家屋の中で燃えている場合は延焼するので、消せないと判断したら消防車をすぐに呼びましょう。

一方、薬品や油火災の場合は一瞬で周囲に燃え広がるため素人が消火するのは困難です。1秒でも早く消防車を要請しましょう。また、間違った消化方法で2次災害を発生させてしまう可能性があるのも油火災の特徴です。

電気火災の場合は、まずブレーカーのスイッチを切ることで燃え続ける原因を解消できます。しかし、いったん炎が出た場所は目に見えなくとも内部で燃えている可能性があります。

なお、地震による火災の原因はほぼ電気火災と言われています。最近はブレーカーに引っ掛けておくだけで地震を感知して自動的にブレーカーを切ってくれる優秀な商品も出てきました。
自分で設置できて、安価なものもあります。

炎が見えないのに燃えている内部燃焼|一晩は避難しておきたい

キッチン火災が鎮火したあと、実は壁の中の木材が光熱を保っており、数時間後に再度キッチンから発火することがあります。

また、電気火災が鎮火したあとに、別の部分に電圧がかかり続け、全く違う場所から発火することがあります。

表面は黒くなって消えているように見えていても、バーベキューの炭のようなもので、水をかけると火の粉が舞い上がりますよね。壁の中の柱が内部燃焼を起こし、数十分経ってから発火する場合があるのです。

このように、一度消えたはずの炎があとになってもう一度火災を起こすことがあります。

鎮火後でも一晩はホテルに泊まる、親戚の家に泊めてもらうなど、念のため外泊をしてください。

実際、ボヤを出した夜は煙のニオイで落ち着いて眠れないものです。

自分自身で消火できる火事はほんの少し。炎が大きくなるにつれ焦りが増して、冷静な判断や行動ができなくなってしまうのが普通です。消火のプロを要請するのは無料です、すぐに通報してください。

消火できるものがあるか

手元に消火器があるかが重要です。一般火災は水で消火できますが、油火災と電気火災は水では消火が困難です。

キッチン用消化器
キッチン用の消火スプレーは油火災専用

消火器も一般火災、油火災、電気火災の3種ともに対応しているものかどうかが重要です。

キッチン用の消火スプレーは油火災専用です。一般火災に使うと、炎を大きくしてしまうこともありますので、用途を間違えないようにしましょう。

火災避難の最大の危険は炎ではなく「煙を吸い込む」こと

火災で一番注意すべきものはです。

煙は高温、有毒、視界不良と危険が重なり合っているだけでなく、一酸化炭素も運んできます。

一酸化炭素は無味無臭、吸い込むことで呼吸をしても酸素が取り込めなくなるため意識を失います。

火事の避難は「煙を吸わない」
ハンカチや服のそでなどで口と鼻を覆う

火災現場では、絶対に煙を吸わないようにします。

  • 口にハンカチなどの布を当てておく
  • 煙は上に行くので姿勢を低くする
  • 呼吸を少なくするために口を閉じる
  • 子供は低めに抱っこする
  • とにかく下へ向かって降りる

また、自分の髪が焼けるにおいや、ナイロン素材の衣服が溶けるにおいがします。

あわててしまわないよう冷静になって、確実に屋外へ逃げましょう。

煙は視界も奪います。さらに高温で火の粉が混ざっているため、目が焼けてしまいます。

ソフトコンタクトをしている場合は目の前が見づらくなることもあります。目を細めて避難してください。

焚き火をしたことがありますか?炎のそばで大きく息を吸うと、煙でなくとも熱気でのどが焼けることがあります。喉が焼けると呼吸できなくなります。煙も同様、熱い気体なので、吸い込まないようにしてください。

たき火
たき火の後始末にも注意

逃げるときは火元の窓やドアを締める|原則論なのでケースバイケース

火事になって119番通報したら屋外へ避難しましょう。

このとき、余裕があるなら消火活動がスムーズになるように次のようにしておいてください。余裕がなければ気にせず逃げてください。

  • 窓やドアを閉じて他の部屋への延焼を防ぐ
  • 玄関の扉は開けておく
  • 車や自転車を少し離れた場所に移動させる

消防士は重装備で放水ホースを抱えたまま自宅へ入ります。

火元の部屋以外のドアは開けておいてください。

また、自宅に車や自転車があると消防車が駐車しづらくなります。

消防車やはしご車が到着するまでに、少し離れた空き地などに移動させておいてください。

消火活動

窓やドアを閉じるのは、煙を閉じ込めて建物中に充満しないようにするためで、消防士が中の様子を見られるようにするためです。

逆に、2階にいるときに1階から火災が起こったときは、2階中のすべての窓を開けて、消防士が入りやすいようにしておいてください。

判断に迷ったときは、何もせず逃げる方法だけを考えてください。

ビル火災なら避難時に排煙窓を開ける

職場やホテルなどのビル内では、煙が充満しやすい場合があります。

余裕があれば、煙を屋外に出す排煙窓を開けてから避難してください。

排煙窓は、階段やホールなどの天井付近にある、火災時のための窓です。

排煙窓の開け方
排煙窓を開けることで、煙で視界が遮られなくなる

排煙窓の開け方は次のどれかが一般的です。

排煙窓の開け方
  1. ハンドル手回しタイプ
  2. ボタンプッシュタイプ
  3. 自動感知タイプ
排煙窓を開ける方法
排煙窓を開けるのはボタンを強く押し込むだけ

手回しタイプの排煙窓オープナー

昭和時代のビルで見られる古いタイプのものです。開ける、閉めるのどちらもハンドルをぐるぐる回す必要があります。

ハンドルは、壁に埋め込まれた鉄板の中に隠されていることもあります。取り出して穴に差し込んで使います。

ボタンプッシュタイプの排煙窓オープナー

ボタンプッシュタイプの排煙窓は、手動・電動問わず、現在の一般的なタイプです。

非常ベルのように簡単に押して外せるプラスティックの中にボタンがあるものや、常にむき出しになっているゴム製のボタンなどがあります。

いずれも、強く押し込むことで排煙窓のロックが外れるようになっています。押してしまえば、自動的に排煙窓が開きます。

ボタンプッシュタイプのものでも、ハンドルがついています。ハンドルは、排煙窓を閉じるとき専用なので気にしないでください。ボタンさえ押してしまえばOKです。

自動感知式の排煙窓

スプリンクラーなどの火災検知器と連動して、システムが自動で排煙窓を開けるものです。

避難者は何もする必要がありません、そのまま避難してください。

排煙窓を開けるのは、火元責任者や避難の際に余裕があればすることです。逃げ遅れている人がいたりけが人がいれば、避難の援助を最優先してください。

建物の奥に向かわないのが火災避難の鉄則

マンションやホテル、オフィスビルの火災では、建物の奥に向かわないことが重要です。

原則としてビルなどの大型建築物には2経路以上の避難通路があります。1つは通常の階段。もう1つは非常階段です。

しかし、狭く古い雑居ビルなどでは、非常階段に荷物をおいていることが多く、逃げられない可能性があります。

火災で非常階段で逃げるのは最終手段
非常階段は荷物置きになっている場合があり
安全とは限らない
非常階段が使えない事例
  • カギが掛かっている
  • サビで開かない
  • 外の荷物が当たって開かない

火災時に建物の奥にある非常階段を目指すと、逃げられない可能性が高いと言わざるを得ません。

できるだけ、正面から逃げられないか、大きな窓から外へ出られないかを考えてください。

単純に「非常階段に向かえばいい」という考えは危険です。火の手が小さいなら、少々のやけどをしてでも正面から逃げたほうが確実です。建物の奥に進むのは最終手段と考えてください。

消防検査のときだけ非常階段がきれいになるようなビルには入らないようにしましょう。

とりあえず隠した荷物は、かならず非常階段に戻されてしまいます。

火事の避難方法は家族にも伝える

火事に合うとき、家族といることが多いと思います。火事は夜に発生することが多く、自宅や旅行先のホテルで家族と寝ているときに火災に巻き込まれる確率が高いといえます。

マンションやホテルのベランダには
下階への避難はしごがある
マンションやホテルのベランダには
下階への避難はしごがある

ニュースでも火事で被害者が少ないのは夜中の工場火災くらいで、ほとんどが民家での火事です。夜中に自宅で火事が発生した場合、あなたが家族を救う方法はほぼありません。

プロの消防士でさえ、命がけでも救助できないことがあります。一般人が火災に勝つ方法は、今すぐ家族に避難ノウハウと自宅での避難経路を伝えることです。

火災だけでなく、地震も同様、とにかく何も持たずにひとりひとりが屋外に出ることを伝えておいてください。

《参考》地震発生時の避難方法

火災時の避難ポイントまとめ

最後におさらいとポイントをお伝えします。

  • 119番通報をためらわない
  • 周囲に知らせる
  • 消せないと判断したら逃げる
  • 煙を吸わない
  • 消火器の使い方を知っておく

「窓はしめておくのがいい」「窓は開けて置かなければならない」などは気にしないで構いません。とにかく逃げることを最優先にしてください。

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