火災は、自宅を失ったり命を落とす危険な災害。消火には、火災の種類と消火方法を知ることが重要です。
火災の主な種類(3つ)
火災には大きく分けて3種類あります。どれも火が出ることは同じですが、消化方法や予防策が異なります。
一般火災(A火災)とは
一般火災とは、燃えるものに火がつく、いわゆる火事です。対処法としては水をかけて鎮火(ちんか)させるという一般的な方法です。燃えるものに火がつく原因は、自然によるものと人間によるものに分かれます。
- ゴミを燃やして延焼
- 吸盤などが日光を収束して発火
- タバコの不始末
- キャンプの炭などの不始末
- 洗濯物やカーテンにストーブから延焼
- 前日に出したゴミへの放火
発火してしまったら、とにかく水をかけて、対象物を濡らすこと、炎の根本の温度を下げることがポイントです。
薬品火災・油火災(B火災)とは
薬品火災とは、化学火災、油火災などとも呼ばれる火災。薬品同士の化学反応が主な原因なので、水をかけるだけでは鎮火しないことが多い火災です。また、火災なので酸素さえ取り除けばいいと考えがちですが消えません。一般火災とは異なり、薬品を中和する消火剤を使うか、逃げることが先決です。
- キッチンの油が着火
- ガススプレーに着火
- 長期保管の薬品が発火
- ガソリンに静電気で発火
- 除光液に引火
天ぷら油が発火したとき、水を掛ける人がいますが、3から5メートル近く炎のついた油がはじけ飛ぶのでタブーです。
炎が小さいうちなら、鍋のフタをミトンやタオルでつかんで、火をゆっくり抑え込むように閉じ込めます。このとき、可能な限り化学繊維ではない服などで近づいて下さい。ポリエステルなどの化学繊維だと、服に引火したり、服が溶けて肌に融着し、重度の火傷を負う場合があります。うまく行ったら、コンロの火を止めて、冷めるまでキッチンから離れておきましょう。
炎が天井近くまで到達した場合は、一般人では消火できません。毛布をかければ鎮火するといった間違った知識で消化しようとすると、毛布に加熱した油が染み込み、毛布そのものが激しく燃え上がることとなります。すぐに119番に通報、近所に火事を伝えて、あなた自身も避難してください。
ヘアスプレーや殺虫剤は可燃性のガスを使用していることがあります。スプレーを噴射しているところへライターの火を近づけると、火炎放射器のようになります。噴射の勢いが弱いと、一瞬でスプレー缶に火が入り、手を失うほどの爆発が起きます。
特に、高温になる真夏のテントに殺虫スプレーや虫除けスプレーを放置しないように注意してください。
電気火災(C火災)とは
電気火災とは、コンセントに溜まったホコリに電流が流れてしまい発火する(トラッキング現象)もので、地震や浸水などの2次災害の引き金となりやすいものです。近年、スマホのモバイルバッテリーを高温な夏の車内で爆発するといった事例もあります。
- 車内の吸盤付きアクセサリーによる集光発火
- 車内に放置したモバイルバッテリーによる火災
- コンセントのホコリからの発火
- タコ足配線による許容電圧以上の使用
- 古くなった電源コードのショートによる発火
- ドライヤー吸気口の詰まりによる火災
近年はスマホコードの損傷による電気火災も増加していますので、一定期間ごとに充電コードを新品に買い換えることをおすすめします。
電気火災は、ショートによるものもありますが、大電圧を使用する家電製品の老朽化にも注意してください。
- 掃除機
- 洗濯機
- ミキサー
- アイロン
- ドライヤー
- 電子レンジ
- 電気ストーブ
- 電気コタツ
上記のように1,500Wを超えるような家電製品は要注意です。コンセントの根本が弱っていないか、コードが何か重いものの下敷きになっていないかなどの基本的なチェックを年2回はチェックします。
消火器が対応できる火災の種類
消火器は万能でないことを知っていますか?
本来、一般火災(A火災)、薬品火災(B火災)_、電気火災(C火災)は、別の消火器でなければ対応できません。近年の消火器は3種類の主な火災に対応できるものが一般的になりました。
下の画像のように白丸(A火災)、黄色丸(B火災)、青い丸(C火災)が表示されていれば十分です。
一般家庭用の消火器なら、5から7年で買い換えるのが通常です。スプレータイプの小さな消火器なら3年ごとに買い換えると安心です。
キッチン、コンセント、放火など、発火原因はさまざま
発火原因は上記のように様々なものがあります。特に気をつけたいのが放火です。スクーターやゴミをねらった放火魔が連続放火を楽しむ場合があり、放火しづらい状況を作っておくことが防災・防犯に繋がります。
ゴミは、決まった時間以外にゴミ収集場所へ出さないこと、玄関の横などに仮おきしないこと、屋外のゴミ置き場にはソーラータイプの人感センサーライトをつけるなどの防犯対策が放火を抑制します。
タバコのポイ捨ては避けようがない
わたしが携わった、とある建設現場でタバコのポイ捨てが原因となった山火事が発生しました。建設現場には指定喫煙所があり、もちろん契約書上も喫煙所での喫煙と火元の管理義務を明記していました。
消防が出動する事態となり、建設会社の社長がすぐにお詫びに来ましたが、これが民家だったら放火と何ら変わりません。タバコのポイ捨てだけは避けようがないのが現実です。
令和の時代でも、まだ火のついたタバコを車の窓からポイ捨てする人がいます。風の強い日は、ゴミ集積場などまで火がついたまま転がることがあります。燃えるものは屋外に置かないという基本を厳守して、火災が発生しづらい環境づくりをしておいてください。
火事で危険なものは炎だけではない
火事で危険なものは、炎だけでなく、視界を奪い喉を焼く煙、無味無臭の一酸化炭素の3つです。
炎によるやけど
人体の70%以上にやけどを負うと、95%以上の致死率と言われています。また、真皮までの重度のやけどは後遺症や合併症のリスクが高いため、炎そのものが危険であることは明白です。
また、炎は気流を生むため、熱風が顔面や目に吹き付けます。少なくとも、炎に向かって進むことはできません。建物の外へ出られる場所を探し、炎とは逆に向かいます。
煙による視界不良と気管のやけど
火事で最も恐ろしいのは煙です。火災現場では、天井を這(は)うように真っ黒な煙が充満します。もちろん、蛍光灯の光すら見えないほどの暗さになるので、行く先はほぼ見えません。
煙は熱いので、部屋や廊下の上に集まります。避難時は必ず腰をかがめて素早く出口に向かいましょう。
無味無臭の一酸化炭素中毒
雪山で車中泊すると、積もった雪のためにアイドリング中の排気ガスが車内に広がり、中の人が命を落とすことがあります。火事でも同じ現象が発生します。炎が酸素を一酸化炭素に化学変化させるため、無味無臭の気体が充満するのです。